確定拠出年金の年末調整や確定申告の手続きは、企業型DC(企業型確定拠出年金)かiDeCo(個人型確定拠出年金)によって対応が異なります。
特に、企業型DCおいて従業員自身が掛金を上乗せして拠出する「マッチング拠出」を利用している場合、「年末調整で会社が対応するのか、それとも従業員自身でも申告が必要なのか」と迷うケースも多く見られます。
本記事では、企業型DCとiDeCoの制度の違いや確定拠出年金の年末調整対応について解説します。
確定拠出年金の年末調整・確定申告は必要?

確定拠出年金には企業型DC(企業型確定拠出年金)とiDeCo(個人型確定拠出年金)の2種類があり、それぞれ税制上の対応が異なります。
企業型DCは企業が従業員に代わって掛金を拠出する制度であり、その掛金は従業員の給与には該当しないため所得税の課税対象にはなりません。そのため、年末調整・確定申告の対象外となります。
一方、「iDeCo」や企業型DCにおける「マッチング拠出」は、個人で掛金を拠出する制度です。そのため掛金は所得税の課税対象となりますが、年末調整や確定申告の際に申告することで所得を控除(小規模企業共済等掛金控除)することができます。
なお、税制上の取り扱いとして所得控除の対象となるのは、あくまで従業員本人が拠出した掛金に限られます。
主な対応の違いについては、以下の通りです。
| 企業型DC (企業型確定拠出年金) |
iDeCo (個人型確定拠出年金) |
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|---|---|---|
| 掛金の拠出者 |
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| 所得控除の対象 |
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| 年末調整・確定申告 |
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企業型DCの制度ごとの対応の違い

企業型DCを導入している企業では、掛金の拠出パターンによって年末調整の対応が異なります。
ここでは、以下のケースごとに対応の違いを解説します。
ケース1:事業主掛金のみの場合の対応
ケース2:マッチング拠出がある場合の対応
ケース3:企業型DCとiDeCoに両方に加入している場合の対応
ケース1:事業主掛金のみの場合の対応
前述のとおり、企業が拠出する「事業主掛金」は、従業員個人が受け取る給与とは異なり、税法上、従業員の所得とは見なされません。
そのため、企業型DCで企業が拠出する掛金が「事業主掛金」のみである場合、その拠出分について年末調整を行う必要はありません。
ケース2:マッチング拠出がある場合の対応
企業型DCで「マッチング拠出」制度を導入している場合、従業員が拠出した掛金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、控除は企業が年末調整で処理します。掛金は給与天引きされ、企業が拠出額を集計・控除処理まで行うため、従業員が個別に手続きする必要は原則ありません。
マッチング拠出の控除と年末調整の具体的な流れ
企業側は年末調整時に、給与天引きした年間の拠出額を小規模企業共済等掛金控除として反映させます。iDeCoとは異なり、企業が拠出額を把握しているため、掛金の控除証明書(小規模企業共済等掛金払込証明書)は発行されません。
従業員は年末調整後に受け取る「源泉徴収票」で、自身の拠出分が正しく控除されているか確認しましょう。不明点があれば人事担当者に問い合わせると安心です。
ケース3:企業型DCとiDeCoに両方に加入している場合の対応
従業員の中には、企業型DCに加入しながらiDeCoにも加入しているケースがあります。
この場合、企業型DC分の掛金は企業側で処理されますが、iDeCoの掛金については企業が金額を把握できないため、従業員自身で年末調整または確定申告によって手続きする必要があります。
会社員の方がiDeCoに加入している場合、勤務先で配布される年末調整の書類(給与所得者の保険料控除申告書)の「小規模企業共済等掛金控除欄」に1年間の掛金額を記入し、証明書を添えて企業に提出します。もし年末調整でiDeCoの申告が漏れていた場合は、確定申告により所得控除を受けることができます。
なお、iDeCoの掛金が給与天引きで支払われている場合は、マッチング拠出と同様に企業側で年末調整時に控除処理を行うため、従業員が申告する必要はありません。
iDeCoを確定申告する場合は?手続き方法と注意点

会社員がiDeCoに加入している場合は、原則、勤務先の年末調整で申告することにより所得控除の手続きが行われます。一方、自営業者や年末調整で申告し忘れた会社員などは、自ら確定申告の手続きを行う必要があります。
ここでは、iDeCoの確定申告の流れと注意点を解説します。
確定申告の方法
iDeCoの確定申告をする際の手順は、以下のとおりです。
1.「小規模企業共済等掛金払込証明書」を受け取って保管する
iDeCoに加入していると、毎年10月頃に国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が郵送されてきます。証明書には、その年の1月から12月までに支払った掛金の総額が記載されています。
証明書は、確定申告時に所得控除を受けるために必要なものです。受け取ったら紛失しないよう、大切に保管しておきましょう。
2. 「確定申告書」を作成する
確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、証明書に記載されている年間の掛金額を記入します。
他の所得控除(生命保険料控除など)と同様に、間違いのないように記載内容を確認しましょう。
3. 必要書類を添付して提出する
確定申告書の作成が終わったら掛金払込証明書を添付し、所轄の税務署に提出します。郵送、持参のいずれでも受け付けてもらえます。
また、e-Tax(国税庁の電子申告システム)を利用すれば、証明書の情報を入力することで、証明書の添付なしに申告を完了させることも可能です。証明書は5年間の保管が必要となります。
参考:国税庁「e-Taxを利用して所得税の確定申告書を提出する場合の「生命保険料控除の証明書」などの第三者作成書類の添付省略の制度について教えてください」
他にも確定申告が必要になるケース
以下のようなケースでも年末調整では控除が適用されないため、自身で確定申告を行う必要があります。
- 「小規模企業共済等掛金払込証明書」の提出を忘れた場合
- 証明書の到着が年末調整の締切に間に合わなかった場合
- 年の途中で退職し、その後再就職せずに年末を迎えた場合(年末調整がされない)
これらの場合でも、確定申告をすれば掛金の全額を「小規模企業共済等掛金控除」として申告でき、所得税の軽減につながります。忘れずに申告しましょう。
【企業向け】年末調整での確定拠出年金対応と控除処理の実務ポイント

企業型DCを導入している企業では、「事業主掛金のみの場合」と「マッチング拠出を導入している場合」で、年末調整における対応が異なります。以下では、企業側が行う実務対応について解説します。
ポイント1.事業主掛金のみの場合は年末調整が不要
企業型DCを導入している企業で「事業主掛金のみ拠出」としている企業は、年末調整での対応は不要です。
ポイント2.マッチング拠出がある場合は企業側が年末調整で対応
マッチング拠出制度を導入している企業では、人事担当者が年末調整で確定拠出年金にかかる所得控除の処理を行います。
企業は、従業員の給与から毎月控除しているマッチング拠出金を集計し、年間の控除額を算出した上で年末調整に反映させます。具体的には、給与計算システムにマッチング拠出額を入力し、「小規模企業共済等掛金控除」欄に年間拠出額が正しく反映されているかを確認してください。
ポイント3.証明書発行に関する注意点と従業員への説明
従業員から証明書の発行有無を問われた際は、企業型DCのマッチング拠出については控除証明書(小規模企業共済等掛金払込証明書)が発行されないこと、そして企業側で年末調整により控除処理済みであることを説明しましょう。
ポイント4.iDeCo加入者がいる場合の配慮
従業員の中にiDeCo加入者がいる場合は、年末調整の案内時に「小規模企業共済等掛金払込証明書」が手元にあれば提出を促すと丁寧です。証明書が提出された場合は、他の保険料控除証明書と同様に内容を確認し、年末調整へ反映させてください。
ポイント5.源泉徴収票での記載ルールと注意点
年末調整を終えた後は、源泉徴収票を発行します。この源泉徴収票では、従業員が拠出した掛金(小規模企業共済等掛金)は、社会保険料と同様の扱いとなります。
具体的には、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に、給与から控除された年間の社会保険料に加え、マッチング拠出として拠出した確定拠出年金の掛金額も含めた合計額が記載されます。
実際の記載方法は以下のとおりです。

出典:国税庁「給与所得の源泉徴収票の社会保険料等の金額欄の「内」とは何ですか?」
上記のように、小規模企業共済等掛金控除がある場合、「社会保険料控等の金額」欄は二段に分けて記載されます。上段(内書)は、小規模企業共済等掛金の額(確定拠出型年金の掛金等)、下段には小規模企業共済等掛金を含めた社会保険料の金額の記載が必要です。
源泉徴収票を作成する際は注意しておきましょう。
まとめ

確定拠出年金における年末調整・確定申告の対応は、企業型DCかiDeCoかによって異なります。
企業型DCでは、事業主掛金のみなら年末調整の手続きは不要です。マッチング拠出を導入している場合は、企業側が年末調整で処理します。いずれにしても、従業員本人が年末調整で申告する必要はありません。
一方、iDeCoの掛金は従業員本人が年末調整時に申告することで控除を受けられます。もし申告を忘れていた場合は、確定申告を行うことで控除を受けることが可能です。
それぞれの制度の違いを正しく理解し、税制優遇を漏れなく活用しましょう。
なお、企業型DCの導入を考えている企業様に向けて、制度の概要や設計ポイントをまとめた無料ガイドブックをご提供しています。導入の検討にぜひお役立てください。
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