企業型確定拠出年金の運営管理機関を選ぶポイントは?

企業型確定拠出年金の導入を検討する際、多くの企業が悩まれるのが「どの運営管理機関に依頼すればよいのか」という点です。


「銀行や保険会社など、選択肢が多くて違いが分からない」
「一度契約すると変更が難しいと聞いたので、失敗したくない」


このように感じている企業は少なくありません。企業型確定拠出年金の制度導入を円滑に進めるためには、加入者の視点を重視しつつ自社の規模やニーズに合った運営管理機関の選定をすることが非常に重要です。


本記事では、運営管理機関の役割や資産管理機関との違いといった基礎知識に加え、選定時に押さえたい4つのポイントを徹底解説します。


長期的なパートナーとなる運営管理機関を選ぶ際の参考にしてください。

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目次

    企業型確定拠出年金の運営管理機関を選ぶポイントは?

    企業型確定拠出年金の運営管理機関を選ぶポイントは?

    企業型確定拠出年金の導入において、制度の設計や運用の中核を担うのが「運営管理機関」です。

    運営管理機関とは、確定拠出年金法にもとづき、厚生労働大臣の登録を受けて運営管理業務を行う機関のことです。銀行、証券会社、生命保険会社、損害保険会社といった金融機関のほか、これらが共同出資して設立した専業会社などが該当します。

    最適なパートナーを選ぶためには、まずその「役割」を正しく理解しておくことが重要です。

    運営管理機関の主な役割(運用関連業務・記録関連業務)

    運営管理機関が担う業務は、大きく「運用関連業務」と「記録関連業務」に分けられます。

    1. 運用関連業務(運用商品ラインナップの提示や情報提供)

    従業員(加入者)が資産運用を行うために必要な「運用商品ラインナップの選定・提示」や、商品内容に関する情報提供を行う業務です。具体的には、次のような内容を含みます。

    • 運用商品の選定と提示(預金、保険、投資信託など)
    • 商品のリスクや特徴に関する情報提供
    • 運用商品のモニタリング(評価・見直し)

    従業員が安心して資産形成を進めるためには、「魅力的な商品が揃っているか」「情報がわかりやすいか」といった点が非常に重要です。

    2. 記録関連業務(レコードキーピング)

    加入者ごとの資産残高や個人情報の管理、運用指図(スイッチングなど)の取りまとめといった、記録管理全般を担う業務です。

    • 加入者情報・資産残高の管理
    • 加入者からの運用指図の受託
    • 給付発生時の裁定事務
    • Webサイトやコールセンターによる残高照会サービス

    記録関連業務は、いわば「企業型確定拠出年金の家計簿」をつける部分にあたり、正確性と安定性が求められます。

    実務上、多くの運営管理機関は「レコードキーピング会社(RK)」と呼ばれる専門の記録管理会社にこの業務を再委託しています。

    「資産管理機関(信託銀行等)」との違い

    運営管理機関と混同されやすいのが、掛金を実際に保管・管理する「資産管理機関」です。

    運営管理機関は制度運営や記録管理を担う一方で、貴重な資産を保管し、売買の決済を行うのは資産管理機関(主に信託銀行)が担当します。

    ■ 運営管理機関:制度の設計、商品選定、加入者への案内、運用指図の取り次ぎ

    ■ 資産管理機関:
    掛金や資産の保管、管理、売買処理

    導入企業が日常的にやり取りするのは主に「運営管理機関」であり、「資産管理機関」はその裏側で掛金の保全を確実に実行しています。したがって、比較検討の対象となるのは、制度運営を担う「運営管理機関」のサービス品質ということになります。

    それでは、次章から具体的な選び方のポイントを見ていきましょう。

    選び方のポイント① 加入者数の制限なく1名からでも制度導入できるか

    選び方のポイント① 加入者数の制限なく1名からでも制度導入できるか

    中小企業やスタートアップであれば、まず確認すべきポイントは「加入者数の制限」の有無です。

    金融機関によっては「50名以上」などの制限がある場合がある

    企業型確定拠出年金は、もともと大企業を中心に普及してきた背景があります。

    そのため、運営管理機関の中には採算性などの理由から、「加入者数が50名以上でないと引き受けない」「30名未満の場合は導入不可、あるいは手数料が割高になる」といった条件を設けている場合もあります。

    とくに大手金融機関や、対面営業を主体とする機関では、一定規模に満たない企業の導入を断るケースも見られます。

    小規模企業や中小企業の場合、人数制限のない機関を選ぶことが重要

    近年は、従業員数名の小規模事業者や中小企業でも、企業型確定拠出年金を導入して福利厚生を整えたいというニーズが高まっています。

    • 「従業員は5人だが、福利厚生を充実させて採用力を高めたい」
    • 「家族経営の会社で、退職金制度を整えたい」

    こうした場合には、「1名から導入可能」としているなど、少人数でも導入できる運営管理機関が選択肢になります。

    人数制限のない運営管理機関であれば、創業初期の少人数の段階でも制度を導入でき、企業の成長に合わせて加入者を無理なく増やせます。

    Web申し込みやオンライン管理に対応しているサービスであれば、小規模企業でも導入しやすく、コスト面の負担も抑えられます。

    選び方のポイント② 運営管理手数料などの「コスト」

    選び方のポイント② 運営管理手数料などの「コスト」

    企業型確定拠出年金は、一度導入すると10年、20年と続く長期的な制度です。わずかな手数料の差でも、企業と従業員の双方に長期的なコスト負担の違いとして表れます。

    導入時だけでなく、ランニングコストの比較が重要

    手数料は大きく分けて「導入時(イニシャルコスト)」と「運用期間中(ランニングコスト)」の2つがあります。

    1.導入時手数料

    規約作成、厚生局への申請代行、システム登録費用など初期費用があります。数万円〜数十万円と幅があります。

    2.経常費用

    制度運営において最も重要な比較ポイントです。経常費用としてかかるコストの例は以下の通りです。

    • 事業主手数料:月額数千円~数万円
    • 加入者手数料:月額数百円
    • 収納代行手数料:月額数百円
    • 資産管理手数料:資産残高に基づいて算出

    長期的な運用になるため、手数料の差が大きな負担差に

    例えば、従業員30名の企業で、A社(月額管理手数料 600円/人)とB社(月額管理手数料 300円/人)を比較すると、以下のような差が生じます。

    • A社600円 × 30人 × 12ヶ月 = 年間 216,000円
    • B社300円 × 30人 × 12ヶ月 = 年間 108,000円

    年間で約10万円の差ですが、20年間続けば200万円以上のコスト差になります。 従業員が増えるほど、この差はさらに大きくなります。

    手数料の高い機関を選ぶと、長期的には企業の負担が増加します。制度導入は長期戦であることを踏まえ、サービス内容とコストのバランスを丁寧に見極め、可能な限りランニングコストを抑えられる運営管理機関を選ぶことが重要です。

    選び方のポイント③ 従業員向けの「投資教育・サポート」の充実度

    選び方のポイント③ 従業員向けの「投資教育・サポート」の充実度

    企業型確定拠出年金では、運用の判断は従業員自身が行います。しかし、投資経験のない従業員にいきなり運用を任せても、何を選べばよいか分からず、定期預金などの元本確保型商品に資産を置いたままになるケースも少なくありません。

    そこで重要になるのが、運営管理機関による「投資教育」と「サポート体制」です。

    導入後の継続的な投資教育は企業の努力義務

    確定拠出年金法では、企業に対し従業員への投資教育を「努力義務」として求めています。 しかし、中小企業の担当者が、投資の仕組みや資産運用の基本を自ら教えるのは容易ではありません。

    そのため、「運営管理機関が、企業に代わってどれだけ手厚い教育サポートを提供してくれるか」が機関選びの大きな基準となります。

    サポートの質を見極める際は、以下の点を確認するとよいでしょう。

    • 導入時研修(導入教育)の内容
      制度の仕組み、メリット・リスクについて分かりやすく説明する対面研修、資料や動画、オンライン説明会などを提供しているか
    • 継続教育の仕組み
      導入時だけでなく、経済情勢の変化やライフプランの見直しに合わせて、メルマガやWebセミナーなど定期的な情報提供があるか
    • 加入者向けWebサイト・アプリの使いやすさ
      スマートフォンでの残高確認やスイッチング(商品預替)がスムーズにできるか。操作性が悪いと従業員が利用しなくなり、運用への関心が低下します
    • コールセンターの対応
      平日夜間や土日の対応があるか。勤務時間外に相談できる体制があると従業員が利用しやすくなります

    最近では、動画コンテンツや、スマホアプリでの資産管理ツールが充実している運営管理機関も増えています。従業員の金融リテラシー向上をしっかり支えられるパートナーを選ぶことが、企業としての支援にもつながります。

    選び方のポイント④ 運用商品のラインナップ(信託報酬の安さ・種類の多さ)

    選び方のポイント④ 運用商品のラインナップ(信託報酬の安さ・種類の多さ)

    実際に従業員が運用で選択する「運用商品」のラインナップも重要な比較ポイントです。 「商品数は多いほど良い」と思われがちですが、実際にはそうとも言い切れません。重要なのは、質の高い商品が適切な数で揃っているかという点です。

    従業員が選べる商品(投資信託)の質と量

    運営管理機関によって、取り扱っている投資信託の種類は異なります。 ラインナップが少なすぎると投資の選択肢が狭まりますが、反対に過度に多い場合、投資経験の浅い従業員は選びきれず、結局運用を諦めてしまうことがあります。

    一般的には、国内外の株式・債券・REIT(不動産)といった主要資産をカバーしつつ、バランス型ファンドなども取り入れ、20〜30本程度に整理されているラインナップが望ましいとされています。

    長期運用に適した「低コスト(信託報酬が低い)なインデックスファンド」が充実しているか

    商品を比較する際の重要な指標が「信託報酬(運用管理費用)」です。 信託報酬は投資信託を保有している間、運用資産から毎日差し引かれる手数料で、数値が小さいほど長期投資の効率が高まります。

    同じような値動きをする「全世界株式インデックスファンド」であっても、商品によって信託報酬が0.1%程度のものもあれば1.5%前後のものも存在します。

    • 信託報酬 0.1% の商品
    • 信託報酬 1.5% の商品

    この1.4%の差は、長期投資においては大きな差となります。 従業員の資産形成を後押しするためには、低コストのインデックスファンド(パッシブファンド)を中心に充実した商品ラインナップを持つ運営管理機関を選ぶことが、長期的に大きなメリットとなります。

    まとめ

    運営管理機関の変更は、従業員への説明や制度上の手続きや資産の移換など、多くの手間とコストが発生するため容易ではありません。

    だからこそ、導入初期段階である「比較・選定」のフェーズで、自社の実情と従業員の利益を第一に考えた機関を選ぶことが重要です。

    「コストを抑えつつ、従業員へのサポートも手厚くしたい」
    「初めての導入で、何から手を付ければ良いか分からない」

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    監修者名
    佐藤 麻衣子
    監修者プロフィール
    社会保険労務士、CFP®認定者。「ライフステージに応じた職場づくりで、企業も人も豊かに」をコンセプトに、社員の自律を促すライフキャリア研修、将来設計を支援する企業型DC導入、継続投資教育を提供。育児介護両立支援やテレワーク導入など、多様な働き方を実現するための人事労務コンサルティングにも注力している。

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