確定拠出年金の「運用指図者」とは?
加入者との違いやポイントを解説

企業型DCやiDeCoに加入していると、退職や転職などのタイミングで「運用指図者」という選択肢を目にすることがあります。


「加入者」との違いや移行後の手続きを正しく理解しておくことは、大切な老後資産を守り、賢く運用を続けるために欠かせません。


この記事では、運用指図者の概要から移行するケース、運用を継続する際のポイントまでをわかりやすく解説します。

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目次

    運用指図者とは?加入者との違いは?

    運用指図者とは?加入者との違いは?

    企業型年金で規約に定める加入者資格喪失年齢に到達した人や転職・退職のタイミング、iDeCoで加入者資格を失った場合などに、「運用指図者」という選択肢が生まれます。

    加入者とは何が違うのか、どのような人に当てはまるのかをわかりやすく解説します。

    運用指図者とは

    運用指図者とは、確定拠出年金において、毎月の掛金の拠出(積み立て)は行わず、これまで積み立ててきた資産の運用指図(商品の売買など)のみを行う人のことです。

    なお、iDeCoの加入者が何らかの理由で掛金を拠出できなくなった場合は、資格喪失届を提出することで、掛金の拠出を止めて「運用指図者」になれます。

    再び拠出できる状況になれば、所定の手続きで加入者に戻ることも可能です。

    「運用指図者」と「加入者」の違いを解説

    「運用指図者」と「加入者」の違いをまとめると、以下の通りです。

    項目 加入者 運用指図者
    掛金の拠出 あり なし
    運用 できる できる
    所得控除(節税) 受けられる 受けられない
    退職所得控除の計算 加入者期間に算入する(※) 運用指図者の期間は算入されない(※)
    口座管理手数料 発生する(原則) 発生する(原則)

    ※退職所得控除は「勤続年数」を基に算定されますが、確定拠出年金における勤続年数とは、原則加入者期間(掛金拠出期間)を指します。

    運用指図者は一時的に掛金の拠出を停止している状態であり、再び加入者の条件を満たせば掛金の拠出を再開することも可能です。

    ライフステージの変化に応じて、柔軟に切り替えられる点が確定拠出年金の特徴の1つです。

    加入者から運用指図者に変更するケース

    加入者から運用指図者に変更するケース

    加入者が運用指図者へと変わるタイミングは、大きく2つあります。

    それぞれで手続きの流れや注意点が異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。

    60歳以上で企業型年金加入資格を喪失した場合

    60歳以上で退職した場合など、勤務先の企業型DCの年金規約で定める加入者資格を喪失すると、企業型DCの運用指図者となることがあります

    なお、60歳に達しただけで一律に自動移行するわけではなく、加入者資格喪失年齢や要件は規約によって異なります。

    運用指図者への移行は、年金規約に基づく加入資格の喪失が条件です。

    判断基準は年齢だけではなく、規約で定める資格喪失年齢や退職・雇用区分の変更なども影響します。

    資格喪失後も、それまで積み立ててきた資産はそのまま残ります。その後の選択肢は主に以下の2つです。

    1. 勤務先の企業型DCに運用指図者として留まり、引き続き資産を運用する
    2. iDeCo(個人型確定拠出年金)へ資産を移換する

    どの選択肢を取れるかは、勤務先の年金規約、本人の被保険者区分などによって異なります。

    企業型DCに運用指図者として残れるか、iDeCoへ移換する必要があるかは、勤務先の担当部署や運営管理機関に確認しておきましょう。

    退職・転職等で加入者資格を喪失した場合

    退職や転職などにより企業型DCの加入者資格を喪失した場合は、掛金拠出をやめて運用指図者となる、または他制度へ資産を移換する手続きが必要になります。

    休職や育休中の扱いは一律ではなく、勤務先の制度設計や規約によって異なるため、個別確認が必要です。

    運用指図者になると、新たな掛金の拠出(積み立て)はできません。

    しかし、これまで積み立ててきた資産の運用は継続でき、スイッチング(保有する運用商品を別の商品に乗り換えること)も引き続き行えます。

    加入者資格を喪失した後も、拠出済み資産をすぐに受け取らず、運用だけを継続できる点が運用指図者の大きな特徴です。

    なお、加入者資格を喪失した後、他制度に移換する場合は6ヶ月以内に移換手続きをしないと、自動移換となって不利益が生じる可能性があります

    手数料や運用機会の面で不利になるおそれがあるため、退職・転職時は早めに手続きを確認しましょう。

    60歳以上で運用を継続する目的

    60歳以上で運用を継続する目的

    60歳以降も、加入者資格の喪失後に運用指図者として資産運用を継続したり、受給開始時期を繰り下げたりすることができます。

    受給開始可能な年齢や条件は加入期間などによって異なるため、事前確認が必要です。

    資金がすぐに必要ではない

    老後の生活費をすでに確保している方や、公的年金・退職金で当面の生活をまかなえる方は、企業型DCの資産を急いで引き出す必要はありません

    このような方にとって、運用を継続することは合理的な選択です。受け取りを先延ばしにすることで、運用期間をさらに伸ばせます。

    運用益が非課税のまま再投資される「複利効果」をより長く享受できるため、さらなる資産の成長が期待できます。

    また、2020年の制度改正(2022年4月1日施行)により、確定拠出年金の老齢給付金は原則として60歳から75歳になるまでの間で受給開始時期を選べるようになりました※。

    受け取り時期の選択肢が広がったことで、ライフプランに合わせた柔軟な判断がしやすくなりました。

    ※ 参考:厚生労働省「2020年の制度改正

    税制優遇のメリットを引き続き享受したい

    企業型DCには運用中の利益が非課税になる税制優遇があります

    通常の投資では運用益に約20.315%の税金がかかることを考えると、有利な制度と言えます。この非課税による差は、運用期間が長くなるほど大きくなります。

    ただし、受取時には税金が発生する点に注意が必要です。

    一時金で受け取る場合は「退職所得」、年金で受け取る場合は「雑所得」として課税されるのが一般的です。

    受取方法(一時金・年金・併用)によって税負担が変わるため、受給開始前に専門家への相談も検討してみてください。

    運用指図者になるメリット・デメリット

    運用指図者になるメリット・デメリット

    加入者から運用指図者になることには、メリットとデメリットの両面があります。自身の状況と照らし合わせて、運用継続かどうかを判断しましょう。

    運用指図者のメリット・デメリット比較

    項目 内容
    メリット
    • 積み立ててきた資産の運用を非課税のまま継続できる
    • 「スイッチング」により、資産配分の見直しが可能
    • 受給開始時期を柔軟に選択できる
      (最大75歳まで繰り下げ可)
    デメリット
    • 新たな掛金の拠出(積み立て)ができない
    • 口座管理手数料が引き続き発生する場合がある

    メリット:非課税運用の継続と柔軟な受取り

    最大のメリットは、これまで築いた資産を非課税で運用し続けられる点 です。スイッチングを活用して、市場環境に合わせたリバランスも行えます。

    また、受給開始を遅らせることで、さらなる複利効果を狙うことも可能です。

    デメリット:コストと運用責任

    一方で、新たな掛金の拠出ができないため、運用益以外で資産を増やすことはできません。特に注意したいのが「口座管理手数料」です。

    運用指図者になっても運営管理機関等への手数料は発生し続けるのが一般的です。

    資産残高が少ない場合、運営の利益よりも手数料が上回る「手数料負け」のリスクもあるため、移換先でかかる費用をあらかじめ確認しておきましょう。

    運用指図者として資産運用を継続するためのポイント

    運用指図者として資産運用を継続するためのポイント

    運用指図者になると掛金の積み立ては止まりますが、資産運用は自分で判断し続ける必要があります。

    以下の3つのポイントを意識し、大切な老後資金を守り、育てていきましょう。

    定期的に資産配分を見直してリスク管理をする

    運用指図者になり新たな掛金の拠出がなくなっても、これまで積み上げてきた資産は引き続き市場の影響を受けます。

    放置したままでは、気づかないうちにリスクの高いポートフォリオ(保有する運用商品の組み合わせ)になっている可能性があります。

    少なくとも年に1回は、保有商品の資産配分を確認しましょう

    特に60歳以降は、受給開始が近づくにつれてリスク許容度が下がる傾向があります。

    株式型の商品から債券型や元本確保型へと少しずつ比率を移し、リスクを抑えるという観点での見直しが有効です。

    手数料(信託報酬)が低い商品を選ぶ

    信託報酬とは、投資信託を保有している間、毎日自動的に差し引かれる運用管理費用のことです。手数料はコストである以上、できるだけ抑えるのが合理的です。

    年率0.1%と1.0%の差は、一見小さく思えるかもしれません。しかし、運用残高が大きくなるほど、また保有期間が長くなるほど、その差は無視できない金額になります。

    新たな掛金の積み立てができない運用指図者にとって、コストの最小化は資産を守る上で重要な視点です。

    同じ運用方針の商品であれば、信託報酬が低い「インデックスファンド」などを検討の基本にしましょう。

    移換先(金融機関)の手数料を比較して選ぶ

    企業型DCからiDeCoへ資産を移換する場合、移換先の金融機関によって「口座管理手数料」が異なります。この手数料は毎月発生するため、長期で見ると大きなコスト差になります。

    国民年金基金連合会と事務委託先金融機関への手数料は一律ですが、運営管理機関(証券会社・銀行など)への手数料は金融機関ごとに設定されています。

    運営管理手数料が無料の金融機関もあるため、移換前に複数の金融機関を比較検討しましょう。

    まとめ

    運用指図者とは、確定拠出年金において掛金の拠出を行わず、資産の「運用」のみを行う方のことです。

    退職や60歳以上での資格喪失などをきっかけに移行しますが、非課税での運用継続や受給時期の柔軟な選択といったメリットがあります。

    一方で、口座管理手数料や運用商品の見直しについては、自身で継続的に管理していく形となります。

    定期的な資産配分の見直しや信託報酬の低い商品選び、移換先の手数料比較を意識し、運用指図者になったあとも資産を守り、育てていきましょう。

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    従業員が「運用指図者」への移行などの重要な選択を迫られる際、企業側がいかに適切な情報提供や教育を行えるかは、制度の有効活用や福利厚生の質を左右する重要なポイントです。

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    監修者プロフィール
    柴田 充輝
    厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。

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