2025年6月13日に年金制度改正法が成立しました。今回の改正、および令和7年の税制改正では、私たちの老後資金計画に直結する「確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)」に関する重要な変更が含まれており、ビジネスの現場でも注目されています。
「iDeCoに入れる期間が延びる」「掛金の上限が増える」といった話を聞き、実際にいつから、どのように変わるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
政府は「人生100年時代」を見据え、高齢期まで働きながら資産形成ができる環境を整備するため、制度の大幅な拡充を決定しました。
本記事では、成立した法改正の内容にもとづき、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の主な変更点と施行に向けた対策について解説します。
2025年成立の年金制度改正法の概要
日本の公的年金制度は、5年に1度の財政検証を行い、必要に応じて制度改正が検討・実施されます。2025年の改正法成立により、高齢期まで働く前提に対応した制度見直しが本格化しました。
定年延長や再雇用によって60代以降も働く人が増える中、私的年金制度(企業型DCやiDeCo)においても、より長く、より柔軟に資産形成ができる仕組みへとアップデートされます。
今回決定した、確定拠出年金に関連する主な変更点は以下の3つで、改正法の施行は下記のとおり予定されています。
| マッチング拠出の要件緩和 | 2026年4月1日 |
|---|---|
| iDeCoの加入可能年齢の引き上げ | 2026年12月1日 |
| 掛金拠出限度額の引き上げ |
参考:厚生労働省「私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール(2025年12月時点)」
これにより、私たちの老後資金準備の選択肢は大きく広がります。決定した内容の詳細について解説します。
変更点①:iDeCoの加入可能年齢が「70歳未満」へ引き上げ

1つ目の大きなポイントは、iDeCoの加入可能年齢の引き上げです。
- 従来:原則65歳未満まで
- 改正後:原則70歳未満まで
企業型DCについては、従来も企業の規約次第で「70歳未満」までの加入が可能でしたが、今回の改正により、iDeCoについても70歳まで加入期間が延長されることになりました。
加入期間が5年延びることで、税制優遇を受けながら、積み立て運用ができる期間が延びるといったメリットもあります。
65歳以降も掛金の拠出をすることで、所得控除の活用、運用益非課税、退職所得控除の増加などのメリットを継続して享受することができます。
※実施時期は2026年12月1日
変更点②:掛金拠出限度額の引き上げ(企業型DC、iDeCo)

2つ目は、毎月積み立てられる金額(拠出限度額)の引き上げです。従来の限度額は制度が複雑で、十分な金額を積み立てられないという課題がありましたが、今回の改正で改善されることになりました。
企業型DCの限度額引き上げ(月額5.5万円→6.2万円へ)
企業型DCのみに加入している場合の拠出限度額について、従来の月額55,000円から月額62,000円へ引き上げられることになりました。
変更の背景として、働き方やライフコースが多様化する中、勤務先の企業年金の有無や形態に関わらず平等に資産形成をできる環境を整え、さらに賃金の上昇などの変化に対応して、より多くの資産形成を可能にする狙いがあります。
iDeCoの限度額も見直し
企業型DCの限度額引き上げに伴い、iDeCoの拠出限度額についても、職業区分(会社員、公務員、自営業など)による複雑な枠組みが見直され、より公平で使いやすい金額設定へと変更されます。
特に、公務員やDB加入の会社員など、これまでiDeCoの掛金が低く抑えられていた層にとっては、枠が拡大することになります。
※実施時期は2026年12月1日
変更点③:マッチング拠出での加入者掛金の額の制限撤廃(企業型DC)

3つ目は、企業型DCにおける「マッチング拠出」の使い勝手の向上です。
マッチング拠出とは、企業が拠出する掛金に上乗せして、従業員自身が給与から掛金を拠出できる制度です。従業員が拠出した掛金は全額が所得控除の対象となるため、税制メリットが大きいのが特徴です。
従来の制限
従来のルールでは、「従業員が拠出する掛金は、会社が拠出する掛金の額を超えてはならない」という制限がありました。例えば、会社の掛金が月額3,000円の場合、従業員も最大で3,000円しか拠出できませんでした。
これでは、老後資金をもっと貯めたいと思っても、会社の掛金が低い場合は十分な活用ができませんでした。
制限撤廃で自由度アップ
今回の改正により、この「事業主掛金以下」という制限の撤廃が決定されました。 今後は、会社の掛金の額に関係なく、制度全体の拠出限度額の範囲内であれば、従業員が自由に掛金を設定できるようになります。
これにより、会社の掛金額に左右されず、従業員の意思で最大限の非課税投資枠を活用できるようになります。
※実施時期は2026年4月1日
定年延長を見据えた「企業型DC」と「iDeCo」の活用戦略
2025年の法改正成立により、最長70歳まで加入可能になります。
この制度延長に伴い、キャリアプランと資産形成の戦略をアップデートする必要があります。特に重要なのが、会社の制度(企業型DC)と個人の制度(iDeCo)の最適な連携です。
企業型DCの加入年齢が「60歳」や「65歳」である場合で、老後資金をもっと積み立てたいのであれば、以下の方法が有効です。
60歳以降はiDeCoで継続拠出
会社での積立が終了した時点で、その資産をiDeCoに移換します。これにより、個人的に掛金の拠出を70歳まで継続できる土台が作られます。
iDeCoに移換して70歳まで積立を続ければ、企業型DCと合わせた加入期間が長くなることで、将来、老齢給付金を一時金で受け取る際の退職所得控除を増やすこともできます(※)。
※退職所得控除の計算における具体的な税制上の扱いは、受け取り方によって異なるため、税理士や金融機関への確認が必要です。
退職所得控除を最大化する
確定拠出年金を一時金で受け取る際に適用される「退職所得控除」は、加入期間が20年を超えると、21年目からは1年あたりの控除額が40万円から70万円にアップします。
- 加入期間20年以下:年40万円
- 加入期間20年超 :年70万円
60歳で積立を止めてしまうより、iDeCoを活用して70歳まで加入期間を10年延長すれば、退職所得控除額が大きく増える可能性があり、受け取り時の税金負担を軽減できる可能性があります。
「制度が変わったから安心」ではなく、会社の加入年齢を確認し、必要であればiDeCoへの切り替え準備をしておくことが、改正メリットを最大化する鍵と言えます。
まとめ
2025年6月に成立した年金制度改正法等により、私たちがより長く働き、より長く資産形成を行うための環境が整いました。
しかし、制度が拡充されても、自社の退職金制度や企業型DCの規約、受け取り時の税制がどうなっているかを知らなければ、その恩恵を十分に受けることはできません。
施行に向けた準備期間である今こそ、自社にとって、あるいは従業員にとってどの制度が最適なのかを見直す絶好の機会です。
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