従来型の退職金に代わる積み立て制度「企業型確定拠出型年金」
会社と従業員に選ばれる理由とは

従業員の将来のために、退職金に代わる積み立て制度を導入したいと考えている経営者・人事担当者の方も多いのではないでしょうか。


従来型の退職金制度は、将来の財務リスクが読みづらく、また転職が一般的になった現代の働き方にそぐわない面もあります。


こうした課題を解決する選択肢として注目を集めているのが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。


企業・従業員双方にとって明確なメリットをもたらすこの制度は、福利厚生の新しいスタンダードとして導入する企業も増えています。


本記事では、企業型DCの仕組みと導入メリットまで、分かりやすく解説します。

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目次

    なぜ今、従来型の退職金の「代わり」となる積み立て制度が必要なのか

    なぜ今、従来型の退職金の「代わり」となる積み立て制度が必要なのか

    なぜ今、従来型の退職金の「代わり」となる積み立て制度が必要なのでしょうか。主な理由は以下の3つです。

    • 企業財務への負担
    • 働き方の多様化
    • 資産形成ニーズの高まり

    企業財務への負担

    従来型の退職金制度は、将来の「給付額」が確定している確定給付型の仕組みが中心でした。

    例えば、勤続30年の従業員に対して「退職時に1000万円を支給する」と決めてしまうと、企業はその約束を果たすために「退職給付債務」を積み上げていく必要があります。

    しかし、景気の変動・金利水準・人員構成の変化などによって、将来的な支出が読みづらくなり、財務計画を圧迫する可能性があります。

    実際にバブル崩壊以降、退職給付債務の積み上がりが企業決算を直撃し、経営を苦しめた事例もあります。

    一方、企業型DCは拠出するコスト(掛金)が確定しているのが大きな特徴です。企業は毎月一定額を拠出するだけで、その後の金銭的義務は基本的に発生しません。

    つまり、「どれくらいの負担をするか」を企業側であらかじめコントロールできるため、財務への影響を安定的に管理できるのです。

    働き方の多様化

    かつての日本は「終身雇用」が前提であり、「勤続年数に応じて退職金が増える仕組み」が合理的と考えられていました。

    しかし現在では転職や副業が一般的になり、ひとつの会社に長く勤め続ける人は減少傾向にあります。

    従来型の退職金では、勤続年数が短いと受け取れる金額が極端に少なくなったり、一定年数未満では支給されなかったりと、不公平感が生じがちです。

    いまや従来型の退職金制度は流動性の高い労働市場にそぐわなくなっていると言えるでしょう。

    一方で、企業型DCは 従業員の個人単位で資産が管理されるため、転職しても自分の資産を持ち運べる「ポータビリティ」が整っています。

    そのため、従業員はキャリアの変化に合わせて積み立てを継続でき、現代的な働き方にマッチした仕組みと言えるでしょう。

    資産形成ニーズの高まり

    近年の物価上昇や年金制度への不安から、「会社や公的年金に頼らず、自分で資産を形成したい」というニーズが高まっています。

    また、Z世代やミレニアル世代を中心に、投資や資産形成への関心が強まっており、給与だけでなく「将来の資産形成を支援してくれる企業で働きたい」と考える人も増えています。

    企業型DCは、拠出・運用・受給の各段階で税制優遇を受けられるため、効率的で透明性の高い資産形成が可能です。

    そのため、「福利厚生」として従業員に喜ばれるだけでなく、企業にとっても人材確保の一手となります。

    企業型DCの仕組み

    企業型DCの仕組み

    企業型DCとは、企業が毎月一定額の掛金を従業員ごとの専用口座に拠出し、従業員が自ら投資商品を選んで運用していく仕組みです。ここでは、基本的な仕組みについて詳しく解説します。

    掛金の拠出と仕組み

    企業型DCの最大の特徴は、「拠出額が確定している」点にあります。

    従来型の退職金一時金制度では、将来の退職金支払い額を見込んで積み立てる必要がありましたが、景気変動や金利水準によって企業の負担が大きく変動する可能性がありました。

    企業型DCは、毎月の拠出額を規約で決めることができ、企業は「この金額以上は負担しない」という上限を設定できます

    さらに、従業員が追加で自ら拠出する「マッチング拠出」制度もあり、企業掛金に加えて自己資金を積み増すことも可能です。

    個人ごとの資産管理とポータビリティ

    企業型DCの大きな魅力は、積み立てられた資産が個人単位で管理されることです。従業員の口座に直接拠出されるため、転職や退職があっても原則として資産は失われません。

    条件を満たせばiDeCoや転職先の企業型DCへ資産を移換できる「ポータビリティ」が整備されており、キャリアの変化に対応しながら資産形成を継続できます。

    受給方法の柔軟性

    従業員は原則60歳以降に積み立てた資産を受け取ります。受け取り方法は「年金形式」「一時金形式」「併用」の3パターンがあり、規約に沿って選択できます(※)。

    例えば、退職直後にまとまった金額を受け取って住宅ローン返済に充てたり、長期的な生活資金として年金形式で分割受給したりすることも可能です。

    状況に応じた柔軟な選択肢がある点は、従業員にとって安心材料となります。

    ※加入する企業型確定拠出年金の規約によっては「併用」できない場合もあります。どの受け取り方が可能かは事前にご確認ください。

    企業型DCの導入メリット

    企業型DCの導入メリット

    企業型DCを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、「企業側のメリット」と「従業員側のメリット」に分けて解説します。

    企業側のメリット

    企業型DCを導入する企業側のメリットは以下の通りです。

    • 財務の安定性
    • 税負担の軽減
    • 福利厚生としての導入
    • 他制度との組み合わせによる柔軟な設計が可能

    財務の安定性

    企業型DCは「拠出=コスト」として事前に確定しているため、企業は予測可能な範囲で財務管理ができます。

    従来型の確定給付年金や退職一時金制度では、景気が急激に悪化する局面で企業業績への打撃と同時に退職給付債務が増加し、二重の負担を強いられることがありました。

    その点、企業型DCは掛金を毎月一定額払えば、それ以上の義務はないため、将来の経済変動に強く、財務諸表上のリスク管理にも役立ちます。

    大企業だけでなく、中小企業にとっても経営の安定性を確保しやすくなるでしょう

    税負担の軽減

    企業が拠出する掛金は全額を損金算入できるため、法人税の課税所得を圧縮する効果があります。

    また、従業員にとっても、掛金が給与として課税されないため、実質的に「非課税で福利厚生を受け取る」仕組みとなります。

    もし掛金分を給与支給するなら所得税が発生しますが、DC掛金として拠出すればそれらが非課税になるため、従業員の手取りベースでも効率的な支援となります。

    福利厚生としての導入

    採用活動において「給与額」だけでなく「福利厚生の充実度」を重視する求職者は年々増えています。

    とくに若手世代は、給与の即時性よりも「将来の安心」を重視する傾向があり、企業型DCのように資産形成を支援する制度を備えている会社は魅力的に映ります。

    さらに、在籍社員にとっても「自分の将来を会社がサポートしてくれている」という安心感は、エンゲージメントの向上や離職防止につながります。

    福利厚生として企業型DCを導入することは、人材確保と定着率向上の両面で有効です。

    他制度との組み合わせによる柔軟な設計が可能

    企業型DCは、既存の退職一時金制度や確定給付型年金と組み合わせた「ハイブリッド型」の制度設計が可能です。

    例えば、従来の退職一時金制度を段階的に縮小しつつ、企業型DCを導入して徐々に移行する方法があります。これにより、既存従業員の不満を抑えながら新しい制度を取り入れられます。

    また、役職や勤続年数、職種に応じて掛金額を差別化する設計も可能であるため、公平性を保ちながらも人材戦略に沿った運用が可能です。

    従業員側のメリット

    企業型DC(企業型確定拠出年金)を導入する従業員側のメリットは以下の通りです。

    • 税制優遇が受けられる
    • 転職時の安心感(ポータビリティ)
    • 働きながら金融リテラシーが向上
    • インフレリスクへの備え

    税制優遇が受けられる

    企業型DC(企業型確定拠出年金)には、以下3つの税制優遇があります。

    ■ 拠出時:

    掛金は給与所得として課税されない

    ■ 運用時:

    企業型DCの運用益は非課税

    ■ 受給時:

    退職一時金として受け取れば「退職所得控除」
    年金として受け取れば「公的年金等控除」が適用される

    このように「積み立て・運用・受け取り」のすべての段階で税制メリットが働くため、長期的には預貯金や通常の投資よりも効率的に資産を増やせる可能性が高まります

    転職時の安心感(ポータビリティ)

    転職や独立が一般的になった現代において、「勤続年数が短いと退職金がほとんど出ない」「会社を辞めたらゼロになる」といった従来型退職金の問題点は、従業員にとって大きな不安要因でした。

    企業型DCでは、積み立てた資産が従業員個人の名義で管理されるため、転職先でも継続可能です。具体的には以下のような移換ができます。

    ■ 転職先に企業型DCがある:

    転職先の企業型DCに資産を移換

    ■ 転職先に制度がない:

    iDeCo(個人型確定拠出年金)に移換

    この仕組みにより、「会社に依存しない退職金制度」として、従業員はキャリアの自由度を高めつつも老後資金を着実に準備できるメリットがあります。

    働きながら金融リテラシーが向上

    企業型DCを導入する企業は、従業員に対して投資教育を行うことが推奨されています。そのため、従業員は業務の傍らで、自然と資産運用の知識を身につける機会を得られます

    結果として、従業員が個人として経済的に自立しやすくなるため、ライフプラン全体の安心感が増すという副次的なメリットもあります。

    インフレリスクへの備え

    現金預金は安全性が高い反面、インフレには弱いという欠点があります。例えば、物価が約2%上昇すれば、100万円の価値は実質的に約98万円に目減りしてしまいます。

    一方、企業型DCでは、従業員自身が投資商品を選択でき、成長資産に投資すれば長期的にインフレリスクに備えることが可能です。

    とくに若年層であれば運用期間が長いため、時間を味方につけてリスクを分散しながら資産を増やすチャンスになります。

    まとめ

    企業型DCは、従来型の退職金制度に比べて企業の財務負担を軽減しつつ、従業員にとっては税制優遇を受けながら主体的に資産形成を進められ、双方にとってメリットの大きい制度です。

    企業側にとっては、将来の退職給付債務リスクを抑えられるだけでなく、採用競争力や人材定着率の向上にも直結します。

    従業員にとっても、ポータビリティによるキャリアの自由度、受給方法の柔軟性、インフレリスクへの備えなど、安心して働き続けられる環境が整います。

    従業員の満足度を高め、企業の持続的な成長を実現するために、退職金に代わる積み立て制度として、企業型DCは現代の働き方にフィットした福利厚生制度と言えるでしょう。

    もし、初めての導入で不安な点や具体的なプランについて知りたい場合は、専門家への相談がおすすめです。

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    監修者名
    北 光太郎
    監修者プロフィール
    社会保険労務士で、「きた社労士事務所」代表。企業の労務担当として10年間実務を経験したのちに独立。社会保険労務士として中小企業の労務管理をサポートするとともに、Webメディアの記事やホワイトペーパー、業界専門誌などで人事・労務分野の記事執筆・監修にも注力。実務経験に基づいた専門性の高いコンテンツ制作を通じてメディアの専門性と信頼性向上を支援している。

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