確定拠出年金のスイッチングとは?
タイミング、手数料、配分変更との違い、手続きの流れを押さえよう!

スイッチングとは、確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)でこれまで積み立ててきた運用商品を別の運用商品に入れ替える手続きを指します。運用商品の見直しやリスク調整に欠かせないこのスイッチングの仕組みを理解しておけば、将来に向けた資産形成の質を高めることにつながります。


本記事では、スイッチングの基本から配分変更との違い、メリット・デメリット、注意点、ベストなタイミング、さらには手続きの流れまで分かりやすく解説します。自身のライフステージや投資方針に応じた、スイッチングの活用術を押さえておきましょう。

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目次

    スイッチングとは

    確定拠出年金制度の1つである企業型DCやiDeCoでは、定期預金や保険などの元本保証型商品をはじめ、元本変動型の株式・債券・不動産などの投資信託といったさまざまな運用商品が用意されています。

    こうした運用商品を、異なる運用商品に預け替えることを「スイッチング」と呼びます。スイッチングは確定拠出年金や投資信託の運用において用いられる手法で、主に投資環境の変化や運用方法の見直しなどに合わせて資産配分を調整する際に行います。

    目的別に見るスイッチングの事例

    • ケース1:リスク回避を目的としたスイッチング
    • ケース2:利益の獲得を目的としたスイッチング
    • ケース3:ポートフォリオのリバランスを目的としたスイッチング

    ケース1:リスク回避を目的としたスイッチング

    運用商品が将来値下がりするリスクを避けることを目的に行うスイッチングです。元本変動型の商品など、値上がりによって得た利益を確定するために、元本確保型の運用商品にスイッチすることがあります。

    ケース2:利益の獲得を目的としたスイッチング

    ケース1とは逆に、値上がりが見込める運用商品を新たに購入し、運用益のアップを目指す場合にスイッチングすることがあります。

    ケース3:ポートフォリオのリバランスを目的としたスイッチング

    安定して利益を得られる運用商品と、高い利益が期待できる投資信託を半々で運用した際には、投資信託の利益変動によって運用資産の構成割合が変化します。運用資産の構成割合(ポートフォリオ)を元に戻すためには、スイッチングが必要です。

    スイッチングと配分変更の違い

    また、スイッチングと混同されやすい言葉に「配分変更」があります。どちらも確定拠出年金の運用商品の変更という意味では共通していますが、スイッチングが「積み立てたお金」を変更の対象とするのに対し、配分変更は「これから積み立てるお金」が変更の対象です。

    つまり、配分変更は「今後、どういう配分でお金を運用するか」を設定するアクションと言えます。例えば、「株式60%・債権40%」で運用している際に、さらなる安定運用を目指して「株式40%・債権60%」に切り替えるケースが例として挙げられます。

    確定拠出年金でスイッチングを行うメリット・デメリット

    確定拠出年金のスイッチングを活用することで、自分に合う形で資産形成を最適化できます。ただし、スイッチングは柔軟に資産運用を可能にする一方で、デメリットも存在します。それぞれ事前にチェックしておきましょう。

    メリット

    市場の状況を踏まえた柔軟な対応が可能

    スイッチングにより、経済状況や市場トレンドの変化に応じて運用資産を調整できます。景気や相場の状況に応じてリスクを抑えたり運用益アップを目指したりと、柔軟に対応できます。

    ライフステージに応じて運用を見直せる

    自身の年齢や家族構成、収入状況により、運用方針は変化するもの。スイッチングを通じて「若い今から、成長性の高い運用商品を積極的に運用する」「年を重ねたので、定期預金や債券を中心に安定運用したい」といったように、ニーズに合わせた運用が可能です。

    売買手数料が無料

    確定拠出年金制度におけるスイッチングは、一般的な証券取引とは異なり売買手数料が発生しません。手数料を気にせずポートフォリオを調整でき、ライフステージに適した資産配分で運用できます。

    デメリット

    タイミングの見極めが難しい

    投資のプロフェッショナルであっても、売買すべきタイミングを見定めるのは難しいものです。相場を読もうとして頻繁にスイッチングを行った結果、損失が増えてしまったというケースも珍しくありません。

    機会損失のリスク

    以前運用していた商品がスイッチングした後に大幅に値上がりするなど、判断が裏目に出る場合もあり得ます。例えば、相場が下落しているときに元本確保型商品にスイッチするケースです。この場合、損失が確定してしまうだけでなく、将来の回復チャンスを逃してしまい、資産を増やせずに終わってしまう恐れがあります。

    約定日までに価格が変動する場合も

    スイッチングの申し込み後、売買成立までに数営業日を要する場合があります。その間に市場が大きく動いた場合、意図しない損失が発生する可能性があります。なかでも海外の運用商品の売買には時間を要するため、スイッチングが即座に反映されない点には注意しましょう。

    スイッチングを行う際の注意点

    確定拠出年金の運用を柔軟に調整できるスイッチングですが、慎重に判断しなければ運用にマイナスの影響を及ぼす場合があります。先述したメリット・デメリットとともに、スイッチングの注意点も理解しておくと安心です。

    長期的な視野を持つ

    確定拠出年金は「長期的な資産形成」を目的とした制度です。運用先を分散して積み立てながらリスクを低減して運用することが基本となるため、目先の利益を優先した頻繁なスイッチングはあまりおすすめできません。

    信託財産留保額や解約控除額を確認する

    運用商品によっては、売却時・解約時に信託財産留保額や解約控除額といった名目の手数料が発生します。こうした手数料は、リターンを削る要因の1つです。商品選択の際は、目論見書や商品説明資料を事前にチェックしておきましょう。

    運用商品の特性を理解する

    運用商品ごとに運用方針や投資対象、値動きの大きさ(リスク)といった特徴が異なります。自身のリスク許容度やライフステージに合った商品を選ぶためにも、リスク・リターンのバランスを十分に理解しておくことが重要です。

    スイッチングの回数制限を確認する

    確定拠出年金におけるスイッチングは回数に制限がないケースも多いですが、運営管理機関によっては「年◯回まで」などと制限が設けられていることもあります。申請タイミングや処理にかかる時間も含め、自身が利用する運用商品のルールを確認し、無理のない範囲で活用しましょう。

    スイッチングのタイミングはいつがベスト?

    スイッチングのタイミングは、確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)の運用に大きな影響を与える要素の1つです。「安いときに買い、高いときに売る」は理想ですが、完璧なタイミングでスイッチングを行うことは容易ではありません。

    その上で、タイミングを見極めるポイントを解説します。

    • 市場動向を踏まえたスイッチング
    • 年齢やライフステージに応じたスイッチング
    • 定期的なリバランスとしてのスイッチング

    市場動向を踏まえたスイッチング

    運用中の資産価値は、経済環境や市場動向などさまざまな要因によって変動します。あらかじめ市場動向にどう向き合うべきかをイメージしておくと安心です。

    「逃げる」ではなく「活かす」視点を

    市場が急落した際として、「今後が怖いから、今すぐ元本確保型に変えよう」といった感情的なスイッチングには注意しましょう。運用資産がマイナスのときに元本確保型商品にスイッチングすると、損失を確定させてしまうからです。その後に市場が回復したとしても、損失を取り戻せないリスクがあります。

    一方で、長期投資の視点に立てば市場の下落局面こそチャンスです。価格が下がった運用資産を買い増すことで、将来のリターンを高められる可能性があります。

    「積立の基本」に立ち返ろう

    市場が高値圏にあるタイミングでは、利益を確定させ、一部を安定資産に移すというスイッチングも有効です。リターンを確保しつつ、資産全体のリスクを抑える戦略的な動きと言えます。

    また、スイッチングの際には「今すぐ全額を変更する」必要はありません。段階的に移していく「分割スイッチング」も可能なため、徐々に価格変動リスクを緩和させましょう。

    年齢やライフステージに応じたスイッチング

    確定拠出年金のスイッチングは、相場の見極め以上に「自身の年齢やライフステージに応じた戦略的な見直し」が重要です。置かれている状況が変化すれば、リスク許容度も変化するもの。長期的な視点に立って先を見据えつつ、今の自身の状況に合う資産配分を検討しましょう。

    若年期(20~30代)

    若年期は「時間を味方につける時期」と言えます。一般的に、長期の運用期間を確保しやすい若い方ほど、リスク許容度は大きくなります。年金の受け取りまで30年以上の長期運用が可能なため、将来の資産形成を見据えて積極的に運用しやすい時期です。

    中年期(40~50代前半)

    中年期は「資産が積み上がる時期」です。ある程度運用した資産が増えていると考えられるため、若年期より運用効率も高まっています。リスクの負いすぎには注意しつつ、バランスの取れた運用を意識しましょう。

    50代に突入すると運用期間が10年を切るケースが出てくるため、利益確定を検討する必要性が出てきます。成長した商品を必要に応じて一部を売却し、安定資産にスイッチングする判断も考えられます。

    受取開始直前期(50代後半~)

    年金を受け取るタイミングが近づいている受取開始直前期は、資産全体を安定化させる方向でのスイッチングが重要です。定期預金や債券といった安定的な資産へのスイッチングを中心に、残り運用期間の短さを考慮した「段階的な切り替え」を意識しましょう。

    定期的なリバランスとしてのスイッチング

    資産運用における重要なポイントは、定期的に資産配分を見直し、自分の運用方針に沿ったバランスを保つこと(=リバランス)です。当初はバランスが取れていたポートフォリオでも、運用結果に応じて資産配分が徐々に変動していきます。そのため、年1回程度を目安にポートフォリオを確認しましょう。

    資産配分が偏っている場合には、スイッチングを通じて元の比率に近づけます。例えば、当初は「株式50%:債券50%」だった配分が数年後に「株式70%:債券30%」に偏っていた場合、株式の一部を売却して債券へスイッチすることで「50:50」の割合に戻すことが可能です。リバランスによってリスクを取りすぎている状態を是正すれば、安定した運用環境を維持しやすくなります。

    リバランスは、自分の運用目標を見直す絶好の機会でもあります。ライフステージや家族構成、経済状況の変化などに合わせて、これまでの運用方法を見直すことも必要です。「目的」と「リスク許容度」を軸に据えることで、タイミングに左右されない判断が可能になり、より納得感のある判断ができるでしょう。

    定期預金から投資信託へのスイッチングで注意すべきこと

    定期預金は元本保証型の安全資産ですが、近年の低金利状況では資産を増やす効果がほとんどありません。そのため、将来の資産形成を考え元本変動型である投資信託へのスイッチングを検討する方も増えています。

    まずは、投資信託へのスイッチングを検討する際に押さえておくべきポイントを理解しておきましょう。

    投資信託のメリット・デメリット

    投資信託にスイッチするメリットは、インフレに備えた資産形成ができる点です。定期預金では増えにくい資産も、運用益により将来的な成長が見込めます。また、確定拠出年金制度の「運用益が非課税になる」という利点をより活かせるという側面もあります。

    また、分散投資によりリスク軽減が図れる点もメリットです。複数の資産に分けて運用することで、一部の値動きが全体に与える影響を抑えられます。

    デメリットは、元本保証がないこと。そのため、相場の動きによっては損失が出る恐れがあります。

    投資信託にスイッチングする前に確認すべきこと

    まずは投資信託の基本を理解しましょう。分散投資の仕組みや信託報酬などの運用コスト、ファンドの運用目的や投資対象など、商品内容や仕組みを理解したうえで選択することが大切です。

    また、運用期間を想定するために「いつまで積み立て、いつ頃に資金を使う予定か」を明確にしておきましょう。そのうえで、リスク許容度を再評価します。自身の年齢や収入状況、ほかの資産とのバランスも踏まえて判断することが重要です。

    投資信託にスイッチングする際の心構え

    投資信託には、株式・債券・REIT(不動産投資信託)など国内外を問わず分散投資する「バランス型」、低コストで特定の市場指数に連動した運用成果を目指す「インデックス型」などがあります。積極的にリターンを狙う「アクティブ型」もありますが、もし商品選びで迷った場合は分散投資ができる低コストのインデックス型を選ぶと安心です。

    信託投資にスイッチする際は、分割投資することで価格変動のリスクを軽減できます。例えば「今月は3割だけ投資信託へ回し、来月は状況に応じて検討」など、柔軟に進めましょう。

    そして、運用では長期的な視点を忘れないことが大切です。投資信託では短期的に値動きがあるため、目先の変動に惑わされないようにしましょう。定期預金との違いを理解し、長期的な資産形成を前提にした運用を心がけてください。

    確定拠出年金のスイッチング、手続きの流れ

    確定拠出年金でスイッチングする際には、手続きの流れを事前に把握しておくことが大切です。ここでは、スイッチングの一般的な手順と確認すべきポイントを5つのステップで紹介します。

    • STEP1:情報収集と準備
    • STEP2:手続き方法の確認
    • STEP3:申込み
    • STEP4:約定日と受渡日の確認
    • STEP5:スイッチング完了の確認

    STEP1:情報収集と準備

    まずは加入者専用サイトなどで、「現時点で保有している運用商品の種類・評価額・損益状況」を確認します。そのうえで、「売却する運用商品と割合」および「購入する商品・割合」をそれぞれ決め、手続きを進めます。

    STEP2:手続き方法の確認

    運営管理機関ごとに方法は多少異なりますが、多くの場合は加入者専用サイトから手続き可能です。手続き可能な時間やメンテナンスの時間帯もチェックしておきましょう。コールセンターや郵送による書面手続きが選べる場合もあります。もしネットに不慣れな場合は、確認しておくと安心です。

    STEP3:申込み

    加入者専用サイトにログインし、主に以下の流れに沿って手続きを進めます。

    トップページの「スイッチング」「運用商品の変更」メニューを選択

    売却する商品を選び、金額や割合を入力

    購入する商品を選び、金額や割合を入力

    入力内容を確認し、パスワードまたはワンタイム認証などを通じて確定

    ※サイトによって、記載内容や方法が異なる場合があります

    確認画面で「売却商品と購入商品の組み合わせ」や「金額の整合性」をしっかりと確認し、手続きを進めましょう。

    STEP4:約定日と受渡日の確認

    申込みの完了後、すぐに売買が成立するわけではありません。多くの場合、申込日の翌営業日から数営業日後の基準価額で売買が成立します。

    この間に市場価格が変動する可能性もあります。スイッチングの際には、「どの時点の基準価額となるのか」「反映までにどの程度日数がかかるのか」を確認しておきましょう。

    STEP5:スイッチング完了の確認

    手続きが完了したら、必ず反映状況を確認します。加入者専用サイトの「運用資産状況」ページで、新たな保有商品の明細・評価額を確認してください。もし不明点がある場合は、運営管理機関へ早めに問い合わせましょう。

    まとめ

    確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)におけるスイッチングは、資産運用をより柔軟かつ戦略的に行うための重要な手段です。市場環境やライフステージの変化に応じて資産配分を見直すことで、将来のリスクを抑えつつ、安定した資産形成が可能になります。特に、年金の受け取りが近づく50代になったら、リスクを徐々に抑える意識を持つとよいでしょう。

    スイッチングのメリット・デメリットや注意点をしっかり把握し、長期的な視点を持って賢く活用してください。

    なお、企業型DCの導入を考えている企業様に向けては、制度の概要や設計ポイントをまとめた無料ガイドブックをご提供しています。導入にあたっては、従業員側のメリットと企業側のメリットをそれぞれ正しく理解しておくことが重要です。不明点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

    チェックリスト付き! 「何から始めれば?」が一目でわかる 企業型DC導入ロードマップ

    監修者名
    柴田 充輝
    監修者プロフィール
    社会保険労務士・FP1級技能士。厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融や不動産メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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    法律・会計・税制上の助言をなすものではございません。法律・会計・税制上の取扱いについては各専門家にご確認・ご相談くださいますようお願い申し上げます。
    作成日時点での情報等に基づき本記事を作成しておりますが、法改正等により内容が異なる場合もございます。

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