【2026年法改正】退職金の5年ルールはどう変わる?
今こそ知りたい企業型確定拠出年金という選択肢

2026年に予定されている退職金の「5年ルール」改正を前に、ご自身の退職金がどうなるのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。


「5年ルール」とは、企業型確定拠出年金(企業型DC)の一時金と会社の退職金を近い時期に受け取るなど、複数の退職金がある場合に適用される税金の調整ルールです。


これは、退職金計算の基礎となる「勤続年数」の重複による、控除の二重取りを防ぐためのものです。


このルールが2026年以降に「10年ルール」へと変更される予定です。とくに退職金と企業型DCの両方を受け取る予定の方は、税負担が変わる可能性があるため、注意が必要です。


本記事では、現行の「5年ルール」の基本と2026年以降の変更点、さらに変化の多い時代における選択肢として、企業型DCの仕組みとメリットまで詳しく解説します。

今、見直しが必要な理由とは 「4大制度」の仕組みや特徴を徹底比較 自社に合う退職金制度の見つけ方

目次

    退職金の「5年ルール」とは

    退職金の「5年ルール」とは

    退職金の「5年ルール」とは、退職金(企業型DCの一時金を含む)を受け取る際に適用される「退職所得控除」に関するルールのことです。

    退職所得控除は、退職金や企業型DCを一時金で受け取った際に適用され、勤続年数に応じて控除額が増える仕組みになっています。

    「20年以下」と「20年超」で控除額の計算方法が異なり、以下の通りです。

    ■ 20年以下の場合の控除額
    40万円×勤続年数
    (※勤続年数が2年未満の場合でも、控除額の最低額は80万円です)

    ■ 20年を超える場合の控除額
    800万円+70万円×(勤続年数-20年)

    この退職所得控除の計算に用いる「勤続年数」の重複適用を防ぐため、退職金を受け取ってから5年以上の期間を空けずに2回目を受け取る場合、重複する勤続年数は控除の計算から除外されるというルールがあります。これが、いわゆる「5年ルール」です。

    しかし、政府は令和7年度(2025年度)の税制改正で、この退職所得課税制度を見直し、2026年1月1日以降に適用される新制度として「10年ルール」への変更を決定しました。

    つまり、2026年以降は、一度退職金を受け取ってから10年を経過しなければ、退職所得控除の計算において重複する勤続年数が除外されるということになります。

    出典:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)

    「19年ルール」との違い

    退職所得控除には、「5年ルール」の他に、企業型DCで適用される「19年ルール」があります。

    「19年ルール」は、先に退職一時金を受け取り、そのあとに企業年金や企業型DCを一時金で受け取る場合に適用されるルールです。

    例えば、60歳で会社から退職一時金を受け取り、その後、65歳で企業型DCを一時金として受け取る場合は、「5年ルール(2026年以降は10年ルール)」は適用されず、「19年ルール」が適用されます。

    一方、企業型DCを先に受け取り、後から退職一時金を受け取る場合は、「5年ルール(2026年以降は10年ルール)」が適用されます。

    退職金を先に受け取るか、企業型DCを先に受け取るかで退職所得控除のルールが異なる点に注意が必要です。

    受け取る順番 適用されるルール
    先に会社の退職一時金、あとに企業型DC一時金 19年ルール
    先に企業型DC一時金、あとに会社の退職一時金 5年ルール(新10年ルール)

    勤続年数5年以下の「短期退職手当」には影響がない

    「短期退職手当」とは、勤続年数5年以下の人が受け取る退職金のことです。

    通常、勤続年数5年を超える退職金は、収入から退職所得控除を引いた額に2分の1を乗じて課税される「2分の1課税」が適用されます。

    しかし、短期退職手当の場合は、収入から退職所得控除を引いた額のうち、300万円を超える部分には「2分の1課税」が適用されません。

    今回の税制改正で変更された「10年ルール」は、退職所得控除の重複適用に関するルールであり、短期退職手当に直接影響はありません。

    出典:国税庁「勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)

    退職金の「5年ルール」の変更点

    退職金の「5年ルール」の変更点

    前述の通り、2026年以後、退職所得控除の「重複期間の調整」に関するルールが5年から10年に改定される予定です。

    例えば、60歳で10年間加入していた企業型DCを一時金で受け取り、その後、65歳で40年間分の退職金を受け取った場合、重複した10年間は退職所得控除の算定期間から除外されることになります。

    この「10年ルール」は、2026年1月1日以降に企業型DCの一時金を受け取り、そのあとに、退職金(一時金)を受け取る場合に適用されます。

    出典:財務省「令和7年度税制改正の大綱

    退職金が「10年ルール」に変更される背景

    退職金の「5年ルール」が「10年ルール」へと改正される主な背景には、定年の引き上げがあります。

    従来は確定拠出年金の一時金を60歳で受け取り、その後、退職金を受け取る時期までに5年以上空くケースは多くありませんでした。

    しかし、近年では定年を65歳まで引き上げる企業が増え、さらに70歳までの雇用確保が法律上の努力義務とされています。

    その結果、企業型DCを60歳で受け取り、その後退職金を受け取るまでの間隔が5年以上空くケースが増加していました。

    そのため、課税の公平性を保つ観点から、勤続期間に応じた控除の一貫した運用を確保するため、2026年以降は「5年ルール」から「10年ルール」に改正されることになりました。

    退職金「10年ルール」の注意点

    退職金「10年ルール」の注意点

    退職金の「10年ルール」が導入されると、これまで退職一時金と企業型DCで重複して利用できていた退職所得控除が、大きく制限されるようになります。

    典型的な例として、「60歳で企業型DCを一時金で受け取り、65歳で退職金を受け取るパターン」です。

    5年ルールが適用される現在の制度では、企業型DCと退職金双方に対して退職所得控除を満額利用できます。

    しかし、10年ルールが適用されると、企業型DCを受け取った時点から10年以内に受け取る退職金については、加入期間が勤続年数と重なる部分が控除の対象外となります。

    具体的な例を挙げて説明します。

    ■ 例:
    65歳で勤続30年の人が10年間、
    企業型DCで積み立てた400万円を60歳で一時金として受け取り、
    その後、65歳で退職金1,600万円を受け取る

    この場合、60歳で受け取る企業型DC400万円は、退職所得控除が「40万円×10年=400万円」となるため、課税所得は「0円」です。

    一方、65歳で受け取る退職金は、10年ルールが適用されるため、企業型DCで使用した「勤続年数10年分」が退職所得の計算から除外されます。

    このため、退職所得控除は「勤続20年」で計算され、「40万円 × 20年 = 800万円」となります。結果、課税所得は「(1,600万円-800万円)×1/2=400万円」となります。

    もし5年ルールだった場合は、退職金を受け取る際に重複期間は考慮されません。

    退職所得控除額は「800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円」となるため、課税所得は「(1,600円-1,500万円)×1/2=50万円」でした。

    上記の例において、65歳で受け取る退職金の課税所得は以下の通りです。

    • 10年ルール適用の場合:400万
    • 5年ルール適用の場合:50万

    このように、10年ルールに変更されると、税負担が増加する可能性があります。

    企業型DCを年金で受け取ることも含め、ご自身の状況に合わせて試算し、将来設計を見直すことを検討しましょう。

    不確実な時代に注目される「企業型DC」という選択肢

    不確実な時代に注目される「企業型DC」という選択肢

    従来型の退職金制度は、会社が原資を積み立て、退職時の勤続年数などに応じて一時金で受け取る仕組みが主流でした。

    これに対して、企業型DCは、会社が拠出した掛金を従業員自身が運用し、将来の受け取り方(一時金または年金)を選べる制度です。

    企業型DCでは、マッチング拠出を導入することで、従業員自身が追加で掛金を拠出できます。

    この掛金は全額が所得控除の対象となるため(小規模企業共済等掛金控除)、所得税・住民税の節税にもつながります。

    さらに、積み立てた資産は個人の名義であるため、転職時にも制度間でポータビリティ(持ち運び)が可能です。受け取り方を年金にすれば雑所得、一時金なら退職所得として扱われます。

    法改正の影響を受けやすい従来型の退職金制度に比べ、企業型DCは確立された税制優遇があり、将来の見通しが立てやすいと言えるでしょう。

    企業型DCのメリット

    企業型DCは節税効果や多様な働き方にマッチした制度です。主なメリットは以下の通りです。

    • 節税効果がある
    • インフレに備える運用の自由度と可視性
    • 働き方の多様化と相性が良い
    • 優秀な人材の確保・定着

    節税効果がある

    会社が拠出する掛金は、法人税法上「全額損金算入」が可能です。つまり給与として支払う場合よりも、会社の課税所得を圧縮できるため、税務上のメリットがあります。

    従業員側も、会社が拠出した掛金は給与として課税されません。そのため、同額を給与で受け取る場合に比べて社会保険料や所得税の負担がなく、効率的に老後資金を準備できます。

    また、従業員が企業型DCを一時金として受け取る場合は「退職所得」として扱われ、「退職所得控除」が適用されるため、通常の所得に比べて大幅な税負担の軽減が期待できます。

    インフレに備える運用の自由度と可視性

    従来型の退職金は、あらかじめ会社が給付額を定めて積み立てるケースが多いため、インフレで物価が上がると、受け取った退職金の実質価値が目減りするリスクがありました。

    一方、企業型DCでは従業員自身が商品を選んで運用できるため、ライフステージに合わせて資産配分を自由に設計でき、インフレ局面でも退職金の実質価値を守りやすいのが特徴です。

    また、企業型DCでは従業員ごとに専用口座が用意されており、Webやアプリを通じて資産状況を随時確認できます。

    この「見える化」により、従業員は退職金を「会社が用意してくれるもの」ではなく、「自分が育てていく老後資産」として意識することができます。

    資産の増減が分かることで、リスクを取りすぎていないか、逆に守りに入りすぎていないかを従業員自身が考えるきっかけにもなるでしょう。

    働き方の多様化と相性が良い

    近年、働き方の多様化が進み、転職が当たり前になりつつあります

    しかし、従来型の退職金制度は企業に長く勤めることが前提であり、短期間で退職すると給付額が減ったり、受給資格を満たせなかったりするケースが少なくありません。

    これに対し企業型DCでは、従業員ごとに個人専用の年金口座が用意されており、退職や転職時にiDeCoや転職先の企業型DCへ資産を移すこと(ポータビリティ)ができます。

    これにより、会社を移っても積み立ててきた資産はそのまま引き継げるため、転職後も引き続き資産形成できるメリットがあります。

    企業型DCは、キャリアが多様化する現代において相性の良い制度と言えるでしょう。

    優秀な人材の確保・定着

    現代の求職者は、給与水準だけでなく「福利厚生」を重視しています。

    企業型DCの導入は、求人票や面接で老後資金形成を会社としてサポートしている証としてアピールでき、福利厚生の充実度を示す材料となります。

    とくに若手・中堅層は、自ら資産形成できる点や資産を移せる(ポータビリティ)点に関心が高く、優秀な人材の確保・定着につながる効果があります。

    まとめ

    退職金の「5年ルール」が2026年から「10年ルール」へと変わることは、勤続年数の計算や税負担に大きな影響を与える可能性があります。

    従来型の退職金制度が終身雇用を前提とし、物価上昇の影響を受けやすいのに対し、企業型DCは従業員自身が運用や受け取り方法を選べるため、柔軟な資産形成を可能にします。

    SBIベネフィット・システムズが提供する企業型DCは、加入者数の制限なく1名からでも制度を設立できます。中小企業でも導入しやすく、ご提案から導入後の制度保全までワンストップでサポートします。

    企業型DCの導入を検討する際には、こちらの資料をご活用ください。

    今、見直しが必要な理由とは 「4大制度」の仕組みや特徴を徹底比較 自社に合う退職金制度の見つけ方

    監修者名
    北 光太郎
    監修者プロフィール
    社会保険労務士で、「きた社労士事務所」代表。企業の労務担当として10年間実務を経験したのちに独立。社会保険労務士として中小企業の労務管理をサポートするとともに、Webメディアの記事やホワイトペーパー、業界専門誌などで人事・労務分野の記事執筆・監修にも注力。実務経験に基づいた専門性の高いコンテンツ制作を通じてメディアの専門性と信頼性向上を支援している。

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    法律・会計・税制上の助言をなすものではございません。法律・会計・税制上の取扱いについては各専門家にご確認・ご相談くださいますようお願い申し上げます。
    作成日時点での情報等に基づき資料を作成しておりますが、法改正等により内容が異なる場合もございます。

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