iDeCo(個人型確定拠出年金)は個人が自ら掛金を拠出し、運用しながら老後の資産を形成する私的年金制度です。一方、企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業があらかじめ決められた掛金を拠出し、従業員が自ら運用する制度となっています。
転職や退職の際に、「iDeCoの資産は転職先の企業型DCへ移管(移換)できるのか」という疑問を持つ方は少なくありません。また移管できることが分かっても、「運用益や加入期間はどうなるのか」「不利にはならないか」といった不安を感じる方もいるでしょう。
本記事では、iDeCoから企業型DCへの資産移管の可否や具体的な手続き方法、移管のメリット・デメリット、注意点などについて分かりやすく解説します。
iDeCoの資産は企業型DCに移管できる?

転職先の企業が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している場合、iDeCoの資産はその転職先の企業型DCへ「移管(移換)」することが可能です。これは「ポータビリティ(持ち運び制度)」と呼ばれる仕組みで、働き方が変わっても確定拠出年金法に基づいて大切な年金資産の運用を継続できるようになっています。
「ポータビリティ」により、転職によって資産が分散するのを防いで一元的に管理できるため、安心して老後の資産形成を続けられます。まさに、現代の多様な働き方に対応した制度と言えるでしょう。
実際にiDeCoから企業型DCへ資産を移すと、自身で管理をする手間が省けるだけでなく、会社が掛金を上乗せしてくれたり、口座管理手数料を負担してくれたりといったメリットを受けられます。
ただし、移管は必ずできるわけではありません。転職先の会社が企業型DCを導入していなかったり、制度はあっても会社の規定でiDeCoからの資産移管を認めていなかったりする場合もあるため、事前に確認することが大切です。
iDeCoから企業型DCへ資産を移管するメリット

iDeCoから企業型確定拠出年金(企業型DC)へ資産を移管(移換)すると、従業員は資産管理の手間や手数料を軽減できるなど、多くのメリットを受けられます。
資産管理がシンプルになる
複数の制度で運用していた年金資産を企業型DCにまとめることで、運用やリスク管理の手間を大幅に軽減できます。運用状況の確認や住所変更といった各種手続きが一度で済むようになるのもメリットです。
手数料負担が軽減できる
iDeCoでは自己負担だった口座管理手数料や国民年金基金連合会への手数料も、企業型DCでは企業が負担してくれます。手数料は長期的に見ると運用益を減らす要因となるため、この負担をなくせるのは大きなメリットと言えるでしょう。
運用商品の選択肢が広がる可能性がある
転職先が契約している運営管理機関の企業型DCが、現在利用しているiDeCoよりも多くの運用商品を取り揃えている可能性があります。運用の幅が広がれば、より自身の投資方針やリスク許容度に合致したポートフォリオを組むことが可能になります。
企業が掛金を負担してくれる
企業が掛金を拠出してくれる点も、企業型DCへ資産を移管する代表的なメリットの1つです。iDeCoのように自身で掛金を拠出する必要がなく、企業のサポートを受けながら資産を形成することができます。
iDeCoから企業型DCへ資産を移管するデメリット・注意点

iDeCoから企業型確定拠出年金(企業型DC)への移管(移換)には、デメリットや注意点もあります。しっかりと把握したうえで、自身の状況と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。
運用商品を見直す必要がある
移管先の企業型DCに、現在iDeCoで運用している商品と同じものがあるとは限りません。その場合、新たな商品ラインナップの中から投資先をあらためて選ぶ手間が発生します。企業型DCの運用商品は企業が選定するため、自身の投資方針に合う商品が見つからない可能性もゼロではありません。
運用停止期間がある
移管手続きの際、iDeCoの資産は一度すべて現金化され、その後に企業型DCの口座へ移されます。この「現金化されている期間」は運用が完全にストップするため、その間に相場が上昇した場合、得られたはずの利益を逃す「機会損失」のリスクがあります。
税制優遇の仕組みが変わる
iDeCoでは掛金の全額が所得控除の対象となり、控除された分だけ所得税や住民税の軽減につながります。一方、企業型DCの掛金は会社が拠出するため、従業員自身の節税効果は基本的にありません。
ただし、従業員も掛金を上乗せできる「マッチング拠出」の制度を利用した場合は、その分の所得控除を受けられます。
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手続きを怠ると「自動移換」のリスクがある
退職後6ヶ月以内に移管手続きを行わないと、資産は「自動移換」という状態になります。自動移換されると、資産は運用されずに現金管理となるうえ、管理手数料だけが引かれ続けるため、資産が一方的に目減りしてしまいます。
さらにこの期間は、老齢給付金を受け取るために必要な加入期間に算入されません。結果として将来の受給開始年齢が遅れるリスクもあるため、手続きは速やかに行いましょう。
移管できないケースもある
そもそも転職先の企業が企業型DCを導入していない場合は、iDeCoからの移管はできません。その場合は、iDeCoで運用を継続するか、企業年金連合会への移管など他の選択肢を検討することになります。
iDeCoから企業型DCへ資産を移管する手続きの流れ

iDeCoから転職先の企業型確定拠出年金(企業型DC)へ資産移管(移換)するためには、計画的な手続きが欠かせません。
移管手続きにかかる期間は通常1ヶ月〜2ヶ月程度ではあるものの、書類に不備があるとさらに時間がかかることも考えられます。特に、退職後6ヶ月以内に手続きを完了させないと資産が自動移換され、手数料の発生や運用機会の損失といった不利益が生じる点には注意が必要です。手続きは余裕をもって早めに着手しましょう。
STEP1:転職先企業へ確認
転職先の担当部署(人事部など)へ、iDeCoからの資産移管が可能かどうかを確認します。企業によっては、iDeCoからの資産受け入れを規約で認めていない場合があるためです。
合わせて、移管に必要な書類や手続きの具体的な流れ、企業型DCを扱う運営管理機関、担当窓口などについても確認しておきましょう。
STEP2:金融機関へ連絡
次に、現在iDeCoを利用している運営管理機関へ、企業型DCへ資産移管したい旨を連絡します。金融機関から移管に必要な書類や手続きに関する案内があるため、指示に従って進めてください。運営管理機関によっては、オンラインでの手続きが可能な場合もあります。
STEP3:必要書類を提出
転職先または企業型DCの運営管理機関から「個人別管理資産移換依頼書」などの必要書類を受け取り、必要事項を記入して提出します。
この際、基礎年金番号・確定拠出年金の加入者資格喪失のお知らせ・掛金引落口座の口座情報などが分かる書類も必要となり、記入内容に不備があると手続きが遅れてしまいます。特に自動移換の期限が迫っている場合、一度の不備が大きな不利益につながりかねません。提出前には書類や内容を念入りに確認しましょう。
また、移管した資産をどの商品で運用するかといった「配分指定(移換金配分指定)」も、この段階で行う必要があります。
STEP4:資産の移管完了
提出された書類に基づき、国民年金基金連合会による加入資格の審査が行われます。審査が完了すれば、iDeCo口座から企業型DC口座へ資産が移管されます。
移管完了後に運営管理機関から通知書類が送付されるため、資産が正しく移管されているか確認しましょう。
まとめ
iDeCoから企業型確定拠出年金(企業型DC)へ資産を移管(移換)する大きなメリットは、管理の手間とコストを同時に削減できる点にあります。年金資産をまとめられるうえ、iDeCoでは自己負担だった口座管理手数料も会社負担となるため、より効率的な資産管理が実現します。
また、会社が掛金を拠出してくれる点も企業型DCならではの魅力です。ただし、移管先の運用商品をあらためて選び直す必要があることは念頭に置いておきましょう。
特に注意したいのが、退職後6ヶ月以内に手続きをしないと資産が「自動移換」されてしまう点です。この状態になると資産は運用されず、手数料だけが引かれ続けるため、自身の状況と転職先の規約を必ず確認し、計画的に手続きを進めることが大切です。
企業型DCの導入は、長期的な資産形成を望む従業員への効果的なアピールとなり、企業の魅力向上や人材定着につながります。制度設計のポイントや導入の進め方についてまとめた資料をご提供しているので、ぜひ下記よりダウンロードしてご活用ください。
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